この記事(後編)を読むと、3つのものが手に入る:
- ダブルダッチがヒップホップと再会した運命の夜
- 4人の少女が世界に渡した「縄」の物語
- お前が今跳んでいる縄が、誰の願いの上にあるかという真実
※ 前編「2人の刑事が、女の子たちのために縄を作った話」を先に読むことを推奨
💭 プロローグ(後編)
マヤさん!1ヶ月待った!続きください!
(笑って)悪くないじゃん、その粘り。じゃ、続きを話そう
前編で、ハーレムの2人の刑事が、ダブルダッチを sport として組み立てた話をしたわよね
うっす。1974年、バレンタインデー、Lincoln Center
よく覚えてる。じゃあ次は、Lincoln Center に立った女の子たちが、世界を変える話
💫 第一章:Fantastic Four、運命の4人
1980年。Lincoln Center の大会。
4人の10代の女の子が、世界チャンピオンに輝いた。
名前を覚えて。歴史に残してあげて。
Delores Brown(デローレス・ブラウン)。De’Shone Adams(デショーン・アダムス)。Adrienne 『Nicki』 Howell(アドリエンヌ『ニッキ』ハウエル)。Robin Oakes(ロビン・オークス)。
彼女たちの名前は、Fantastic Four(ファンタスティック・フォー)
Fantastic Four…
中学7年生の時に4人で組んだチーム。American Double Dutch League のオーディションを受けて、そのまま伝説になった。
彼女たちが見せたのは、4人が同時にロープの中で跳ぶ技。それまで、誰もやったことがなかった。
観客は息を呑んだ。
メンバーのロビンは、後にこう振り返ってる。『It was known that watching the Fantastic Four, if you blink your eye, you’re gonna miss something.(Fantastic Four を観るなら、瞬きしちゃダメって言われてた。何かを見逃すから)』
写真出典: OPB — How the Fantastic Four took Double Dutch to new heights
動画: “Double Dutch: The Fantastic Four | Jumping Into History”(YouTube)
動画: Fantastic 4 Double Dutch @ Lincoln Center(Facebook / Fantastic Four 公式ページ)
やばっ…見たい
翌1981年、彼女たちはマクドナルドのCMに出演。テレビで全米に流れた
同じ年、エミー賞受賞ドキュメンタリー『Pick Up Your Feet』に主演。Mayor Ed Koch(エド・コッチ市長)も大会に来た
ハーレムの中学生4人が、全米のスターになってた
🎤 第二章:1982年、The Roxy の夜
1982年。ニューヨーク、チェルシー地区にあったクラブ The Roxy(ザ・ロキシー)
そこでヒップホップ・ナイトを始めていた女性がいた。Ruza Blue(ルーザ・ブルー)。クール・レディ・ブルーって呼ばれてた
女性のオーガナイザーっすか?
そう。彼女には、ある悩みがあった。『ヒップホップが、男だけの世界になりかけてる』って。
彼女自身の言葉:『The hip-hop scene was so male-dominated and I wanted to infuse some female energy.(ヒップホップ・シーンは男ばかりだった。だから、女性のエネルギーを注ぎ込みたかった)』
1981年9月のある日、彼女はテレビでマクドナルドのCMを見た。
跳んでいた4人の女の子に、釘付けになった。
『彼女たちを探し出さなきゃ』
Ruza は、警察の許認可システムを一つ一つクリアして、Walker と Williams から許可を取り付けて、Fantastic Four を Roxy に連れてきた
警察と交渉…
ダブルダッチは、その頃にはNYPDが運営する公的なリーグになってた。だから、勝手に出演させられない
Ruza Blue は、ヒップホップに女性のエネルギーを入れるために、本気で動いた
※ 写真はイメージです。AI(Gemini)で生成。
マヤさん…オレが目指してる NDDL の大会って、こんな歴史を背負ってたんすね。なんか、急に燃えてきたっす!
(微笑んで)あんたが目指す NDDL は、ただの大会じゃないの。
物干しロープから始まって、警官2人が sport に組み立て直して、Roxy のフロアでヒップホップとぶつかって、ヨーロッパまで渡った縄。
その全部が、積み重なってる場所よ
🎵 第三章:5つのカルチャーが、同じ床の上で生きていた夜
The Roxy のフロア、1982年のあの夜。
DJ Afrika Bambaataa(アフリカ・バンバータ)がレコードを回してた。ヒップホップ第二世代のリーダー。
Infinity Rappers(インフィニティ・ラッパーズ)がライムを刻んでた。
Futura 2000(フューチュラ2000)と Fab 5 Freddy(ファブ・ファイブ・フレディ)がスプレー缶でキャンバスを彩ってた。グラフィティの伝説。
そして、Rock Steady Crew(ロック・ステディ・クルー)がブレイクダンスを始める前。
フロアの真ん中で、Fantastic Four が縄を跳んだ
※ 写真はイメージです。AI(Gemini)で生成。
うわぁ…
DJ、MC、グラフィティ、Bboy、そして — Double Dutch。
その夜、5つのカルチャーが同じ床の上で生きていた。
ヒップホップの伝説、Fab 5 Freddy はこう証言してる。
『The tour in France was New York City rap, and double dutch was part of the street culture. It fit perfectly.(フランス・ツアーはニューヨーク・ラップだった。ダブルダッチはストリート文化の一部。完璧にハマってた)』
『Every time you’d watch them it was astonishing.(あの子たちを観るたびに、驚かされた)』
その夜の Roxy にいたかったっす…
あんたが今跳んでる縄の中に、あの夜のリズムが、ちゃんと生きてるよ
🌍 第四章:そして、世界へ
1982年11月。New York City Rap Tour。
Fab 5 Freddy と Ruza Blue が企画した、ヒップホップを世界に紹介するツアー。
行き先は、フランス・パリ。
DJ、MC、グラフィティ・アーティスト、Bboy。そして、Fantastic Four
写真出典: Le Républicain Lorrain — NYC Rap Tour en 1982(Le Républicain Lorrain アーカイブ)
ヨーロッパに渡ったのは、ヒップホップの『5つの要素』だった。
Fantastic Four のメンバー、デローレスはこう言ってる。『In France they were like, The Americans are coming to town! At this point, rap was coming into its own. We had Afrika Bambaataa, the Rock Steady Crew, and us.(フランスでは「アメリカ人がやってきた!」って感じだった。ラップが台頭してきた時期で、Afrika Bambaataa、Rock Steady Crew、そしてあたしたちがいた)』
ヒップホップは、男だけの文化として渡ったんじゃない。ダブルダッチを連れて、女性のエネルギーと一緒にヨーロッパに渡った。
だから今でも、フランスでは、ダブルダッチは『ヒップホップの女性的シンボル』として記憶されてる
フランスで…
日本に来たのは、その後。あんたが今跳んでる縄も、その流れの中にあるの
💭 第五章:お前の縄が背負っているもの
マイクは後にこう言った。
『It belonged to the streets of Harlem.』
『これは、ハーレムの街のものだった』
(少し間)…全部、振り返ってみて。
物干しロープを2本にして街角に出た少女たち。
公園で女の子の惨敗を見て『何かしたい』と思った警官、マイク。
その電話を受け取った同僚、デイブ。
600人の子供たちが集まった、1974年2月14日。
Lincoln Center に立った Fantastic Four。
The Roxy で Bboy と並んで跳んだ4人。
パリの夜、ヨーロッパに渡った縄。
その全部が、あんたのロープに繋がってる。
あんたが跳ぶ時、その50年が、一緒に跳んでる
…
分かる?あんたは、ただ跳んでるんじゃないの。50年前のハーレムの少女たちの『続き』を、跳んでるの
🌍 エピローグ:跳べ
…マヤさん、オレ、今夜、練習行ってきていいすか?
(微笑んで)悪くないじゃん、その目
行きな。ロープの中で、自分が何を背負ってるか感じてきな
あんたの跳ぶその一回一回が、ハーレムの女の子たちの続きなんだから
うっす!
(独り言)…意外と、ちゃんと聞いてたじゃん。悪くない
👥 登場キャラクター紹介
オレ、フリッキー!19歳、ダブルダッチ歴1年8ヶ月の大学2年生っす。今回も質問担当!
フリッキー(主人公)
- 19歳、神奈川出身、大学生 + コンビニ夜勤バイト
- カッコつけてるけど、根は純粋
- 小学生時代、テストで全部の問題が解けなかった時に何も書かずに出して「間違ってない=ノーミス=100点です」と先生に言い張った事がある
- 口癖:「マジで?」「やばっ」「すげーすげー」
あたし、マヤ。30歳、ダブルダッチパフォーマー兼カルチャー誌ライター。文化人類学修士。前編に続いて、縄の物語の後編を語る役
マヤ(姉さん)
- 30歳、横浜出身、ダブルダッチパフォーマー兼カルチャー誌ライター
- 文化人類学修士、ダブルダッチ歴15年、英仏語堪能
- マイナーなアーティスト好きと言って、有名になった瞬間「もう違うんだよね」と言い出す。本人は「商業化されると本質が…」と論理的に説明できる
- 観葉植物の世話が下手で全部枯らす、窪塚洋介のファンだが、彼みたいな話し方をする一般人は嫌い
- 口癖:「で、それのソースは?」「あんたねぇ…」「Whatever.」「悪くないじゃん」(最大の褒め言葉)
📚 参考・出典
Double Dutch の歴史
- National Double Dutch League — History
- Wikipedia — Double Dutch (jump rope)
- Vice — Double Dutch’s Forgotten Hip-Hop Origins
- NPR — How the Fantastic Four took Double Dutch to new heights
- Kennedy Center — Double Dutch: Jump In!
Fantastic Four / The Roxy / Ruza Blue
- The Fantastic Four — 公式サイト
- The Roxy (New York City) — Wikipedia
- Red Bull Music Academy — Kool Lady Blue Reflects on the Golden Age of Hip-Hop
David A. Walker / Ulysses Williams
音源・映像(参考)
- The Incredible Bongo Band - Apache(1973):前編で言及した「ヒップホップの国歌」
- Frankie Smith - “Double Dutch Bus”(1981)
- Pick Up Your Feet: The Double Dutch Show(1981、エミー賞受賞ドキュメンタリー)
※ ダブルダッチの起源には諸説あります。本記事(後編)は、最も広く伝えられている流れ — 1980年 Lincoln Center で世界チャンピオンになった Fantastic Four、1982年 The Roxy でのヒップホップ・カルチャーとの邂逅、同年の New York City Rap Tour による欧州進出 — を中心に構成しています。